この記事は下記のような方におススメです。
- まずは自宅で学べるような手軽な救命講習を探している。
- 医療従事者でなくとも基礎から応用までトータルで学べる救命講習を知りたい。
- AED補助金制度の要件に救命講習があるため、情報収集をしている。
はじめに
新型コロナウィルス感染症の流行が始まって丸3年以上が経過しました。皆さんの中には、この3年間で自身や家族の健康、命の大切さと向き合う機会が増えた方もいらっしゃるのではないでしょうか。ただ、対面方式での催事の自粛が続いた昨今では、「救命に関する勉強をしたくても講習会が開催されていない」という悩みを抱えている方も少なくないと思います。新型コロナウィルス感染症の感染症法上の位置づけも変更され、新しいことにチャレンジするには良い機会だと思いますので、今回は救命講習について解説していきます。
1. どんな人が救命講習を受けるべき?
救命講習と聞くと、自動車学校での救命法に関する講義を真っ先にイメージする方もいらっしゃるかもしれません。誰もが経験したはずなのに、今となっては覚えていない…という声も聞こえてきそうです。やはり、一度経験しても時間が経てば誰もが忘れてしまうものです。そう考えると、救命講習の受講経験の有無を問わず、すべての人が“受講対象者”になりうるのではないでしょうか。
2. 自宅に居ながら受講できる救命講習がある
コロナ禍は私たちに多くの試練を与え、私たちは不自由な思いをしてきました。しかし、Zoomなどを用いたオンライン講習会が身近になったことで、自宅に居ながら様々なことを学べる時代にもなりました。
例を挙げると、日本赤十字社東京都支部で開催されている救急法オンライン講座は胸骨圧迫とAEDの使い方を60分間で学ぶコースです。ご自身で準備したTシャツを傷病者に、四角い紙をAEDバッドに見立て、500mlのペットボトルを圧迫することで胸骨圧迫とAEDの実技をトレーニングする講座があります1)。日本AED財団のオンラインAED救命&健康講習会も胸骨圧迫とAEDを60分で学ぶコースです。体を動かす時間や健康について考える時間も含まれているところが特徴的です2)。この2つの講習会の情報を拝見したとき、時代に合わせて非常に工夫を凝らした内容だと感じました。制約がある中でも学びを止めない姿勢は、救命には不可欠ですよね。オンライン講習では練習用のAEDや成人を模したマネキンに触れることはできませんが、身近にあるものを救命トレーニングに使うことで、講習後にも繰り返し自主練習ができることもメリットのひとつだと思います。
3. AEDの操作だけ知っていれば問題ない?
心肺停止に陥った患者の救命率(社会復帰できる可能性)は分刻みで下がっていきます。除細動(電気ショック)によって不整脈が止まれば、その時点で救命率の低下は食い止められます。AEDの操作は意外とシンプルで、電源を入れてガイダンスに従えば操作を完了することができます。操作法を紹介している動画サイトも身近にあるので、「講習を受ける必要性はあるのか」という声が聞こえてきそうです。果たして、AEDの操作法だけ知っていれば問題ないのでしょうか。
医療ドラマで医師役が手動式除細動器を使用する場面では、一発で不整脈が止まるドラマティックな展開が印象に残りますよね。その影響で「AEDを使って除細動さえすれば、誰でも命が助かる(すぐに不整脈は止まる)」というイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、1回の除細動で不整脈が止まるとは限りません。除細動の治療に反応が乏しい難治性のVF(心室細動)も存在します。
「不整脈が止まるまで除細動を連発すればよいのではないか」という素朴な疑問が沸く方もいらっしゃるかもしれませんが、JRCガイドライン2020においても、連続したルーチンの除細動(2回連続の除細動)を使用しないことを提案する3)と言及されており、現行のAEDでも2分ごとに除細動が実施されます。つまり、“不整脈を止めるチャンス”は、2分に1回しか訪れないのです。残りの時間は、絶え間なく胸骨圧迫を実施し、救命率の低下を緩やかに抑える必要があります。このように、AEDと胸骨圧迫はセットで捉える必要があります。
4. 救命処置の基礎から応用までをトータルで学ぶには?
成人の胸骨圧迫やAEDだけでなく、BLS(一次救命処置)をトータルで学びたい場合は、アメリカ心臓協会のBLSコースをおススメします。年齢別(成人・小児・乳児)のCPR1人法・2人法、窒息解除、チームダイナミクスも含むコースです。練習用のAEDとマネキン、ポケットマスク、バックマスクを使ってトレーニングを行います。もちろん、医療従事者でなくとも受講できます。実技試験と筆記試験に合格することで、認定証が発行されます。アメリカ心臓協会が主催しているコースは世界共通の内容ですので、「世界基準の救命処置ができる」と背中を押されているようなものです。
私は、臨床現場で数えきれないほどの救命処置を経験しましたが、その現場はまさに“非日常”です。非常事態でも救命のために一歩前に出て体が動くかどうか、持っている力をすべて発揮できるかどうかは、その人の“自信”も関連していると感じます。BLSコースにおいて、熟練したインストラクターの評価で合格をもらい、世界基準の認定証を持っているという経歴は、必ずあなたの自信につながります。
福岡博多トレーニングセンターで開催しているBLSコースへのお申し込みは、下記よりお申込みいただけます。
福岡県福岡市を中心に、福岡県北九州市、久留米市、熊本県、長崎県で定期的に開催しています。
5. アメリカ心臓協会のオンライン講習はあるの?
すべてをオンラインで完結するコースはありませんが、「ハートコードBLSコース」というオンライン学習と会場での実技講習が含まれるハイブリッド方式のコースがあります。自宅等で繰り返しオンラインパートを学習して知識を身につけた後に、会場では実技に絞って講習を受けます。コースは2時間で終わりますので、従来コースの半分以下の時間で対面方式と同じBLSプロバイダー資格を取得できます。
⇒ハートコードBLSコースについてはこちらで詳しく解説しています!
福岡博多トレーニングセンターは、コロナ禍においても、感染予防策を講じながら対面方式のコースを継続しています。どんなときも学習を継続できる環境で、あなたのスキルアップを応援しております。
ハートコードBLSコースとはオンライン併用型のBLSコースで通常のBLSコースと同様にAHAの認定証が発行されます。
福岡博多トレーニングセンターで開催しているハートコードBLSコースへのお申し込みは、オンラインパート・実技パート共に下記よりお申込みいただけます。現時点では、公募での開催は福岡県(博多駅より徒歩4分)に限定されていますが、出張依頼などあれば可能な限りご協力いたしますので、お問い合わせよりご連絡ください。
まとめ
今回は、救命講習に関して解説してきました。自宅で手軽に受講できるもの、会場で対面方式の指導を受けるもの、基本的なものから専門的なものまで多岐に渡りますので、ご自身のニーズに合った講習会が見つかれば幸いです。
1)日本赤十字社東京都支部,講習会について
(2023年4月27日参照)
2)公益財団法人日本AED財団,AED講習会のご案内,
(2023年4月30日参照)
3) 一般社団法人日本蘇生協議会,JRC蘇生ガイドライン2020,医学書院,2021,100-101