特殊なCPR(心肺蘇生法)について

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皆さんはCPR(CardioPulmonary Resuscitation:心肺蘇生法)というと、成人であれば30:2のCPRを思い浮かべますよね。その方法は、AHAから出されたガイドライン2015などに記されている正しい方法で、誰でも、どこでも実施できるスタンダードな方法と言えます。
詳細を確認したい方は以下の関連記事をご覧ください。

BLSとは|BLSについての要点を整理②|成人のBLS

2016.08.01

そのスタンダードな方法のCPRの他に、実は様々なCPRの方法があるのを皆さんはご存知でしょうか。一定の基準を満たした場合、救急医療の現場などでは特殊なCPRを行うことがあります。ここでは、以下で特殊なCPRを簡単に紹介していきます。

continuousCPR

continuousCPRとは、人工呼吸を行わず、持続的に胸骨圧迫を行う方法のことを言います。通常のCPRでは、胸骨圧迫の途中で、ポケットマスクやバックバルブマスクなどの人工呼吸中に中断が生じてしまいます。胸骨圧迫を中断することで、その効果が減少してしまう可能性が指摘されています。
実際に、前向き観察研究では、中断を最小限にすることで病院外心停止の生存退院率が改善したのと報告があります。一方で、クラスターランダム化試験では、通常の CPRと生存率、神経学的予後の改善に有意差はなかったとの報告がされています。1)
何れにしても、マスクなどのデバイスを持っていなかったり、嘔吐・吐血といった感染の危険性があるなど、人工呼吸ができない環境下では、1つの方法・手段として知っておくことは良いかもしれません。

ECPR

ECPRとはextracorporeal cardiopulmonary resuscitationの略で「対外循環式心肺蘇生」のことを言います。このCPRの体外循環装置(V-A ECOMなど)を用いて、十分な自己循環の回復と、可逆的な疾患を治療するためのいわば時間稼ぎの目的で行うCPRです。
即座にECPRができるシステムがあって、目撃のある心肺停止の症例で、バイスタンダーCPRが実施されている場合に、想起される疾患が急性心筋梗塞、肺塞栓症、偶発性低体温、薬物中毒などで、有益である可能性が高い場合にECPRの適応になると言われています。
実際に、2014年に日本で報告されたデータでは、初期波形が心室細動(VF: Ventricular fibrillation)である成人院外心停止症例で、救急覚知から病院到着まで45分以内の症例を対象としてECPRが神経学的予後改善に寄与したとの報告があります。2)
ECPRについてより詳しく知りたい方は、以下にリンクを掲載しておりますのでそちらをご覧ください。
PCPSを用いた体外循環式心肺蘇生(ECPR) について【外部サイト】

開胸CPR

開胸CPRとは、その名の通り実際に胸を開いた状況で行うCPRの事で、通常のCPRと比較して冠動脈の血流を良好に保つことができるという報告がされています。その適応は外傷による心停止、心臓血管術後早期、開胸開腹の手術中などがあります。
特に外傷患者の開胸CPRは、心損傷や大動脈損傷の修復を主な目的として、開胸する時に大動脈クランプによる一時的な止血とともに行います。外傷患者における開胸CPRにおいては、鈍的外傷で病院に到着する10分前に心肺停止になった症例や鋭的外傷で病院到着の五分前に心肺停止に至った症例などが適応となっていますが、その適応や効果については十分な有効性が認められていないのが現状です。3)

機械によるCPR

機械によるCPRは質の良い胸骨圧迫を持続できるため用手胸骨圧迫が困難な場合や救急車での移動中、低体温による心肺停止で、長時間のCPRが必要とする場合などに有用とされています。実際に救急現場で日本ストイライカーの「Lucas」や旭化成ZOLLメディカルの「auto Pulse」などが使用されている状況を目にしたことがある方もいるかもしれません。
機械によるCPRでは、深さや圧迫テンポなど正確に実施できるというメリットがありますが、現状では、用手胸骨圧迫よりも優れているという報告は複数のランダム化比較試験でも証明されていません。主な理由としては、機械によるCPRを実施するには機械の設定(位置の確認や人体の下に装置を敷き込んだりすること)をしなくてはならず、その設定に時間がかかり、胸骨圧迫の中断の延長や、開始が遅れてしまうことが考えられます。
現状、ヨーロッパのガイドライン(ERC:European Resuscitation Council)や日本のガイドライン(日本蘇生協議会;JRC:Japan Resuscitation Council)などでは、用手胸骨圧迫に代わって機械によるCPRをルーチンに使用することは推奨されていません。4)

YOUTUBEに旭化成ZOLLメディカルの「Auto Pluse」を使用した模擬CPRの動画がありましたので、以下に掲載おきます。この動画を見ると、実物を見たことがない人でもイメージしやすいと思います。

最後に

今回はいくつかの特殊なCPRについて説明してきました。どのCPRの方法もメリットとデメリットがあります。それらを知っておくことは、医学に身を置く者として重要なことであることは言うに及びません。
しかし、上記で紹介したCPRは、特殊な状況下でのみ行うことができるものです。最も大切なことは、通常のCPR技術をいつ何時でも行うことのできるようにしっかりとマスターしておくことです。どんな環境下、状況下でも、成人であれば通常の30:2のCPRを行ってはいけないということはありません。
皆さんが持っているCPRの技術が、どんなときでも最も信頼できるものなのです。明日からの実践に自信を持てるよう通常のCPRの技術をもっと磨いていきましょう。

引用・参考文献
1)Nichol G Leroux B, Wang H, et al.Trial of Continuous or Interrupted Chest Compressions during CPR.N Engl J Med 2015;373:2203-14. PMID:26550795

2)Sakamoto T,et al. extracorporeal cardiopulmonary resuscitation versus conventional caediopulmonary resuscitation in adults with out-of-fospital cardiac arrest;aprospective observational study 2014;85:762-8.PMID:24530251

3)Bradley MJ,et al.Open chest cardiac massage offers no benefit cver closed chest compressions in patients with traumatic cardiac arrest. J Trauman Acyte Care Surg 2016;81:849-54.PMID:27537507

4)Perkins GD,Lall R,Quinn T,et al. Mechanical versus manual chest compression for out-of-hospital cardiac arrest(PARAMEDIC):a pragmatic, cluster randomized controlled trial.Lancet 2015;385:947-55.PMID:25467566

志賀 隆 監:ER/救急999の謎.株式会社メディカル・サイエンス・インターナショナル,東京,2017

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