AEDとは | AEDの基礎知識や設置場所や導入のヒントについて解説

この記事は下記のような方におススメです。

  • AEDを基本的なところから知りたい。
  • 心肺停止のイメージがつかない。きちんとした定義を知りたい。
  • 身近な施設にAEDを設置した方が良いか検討している。

はじめに

この記事は、医療従事者はもちろん、AEDに関心のある一般の方も対象にAEDの基礎から設置のヒントまでをトータルで解説するものです。専門用語も出てきますが、ご自身の必要なところだけ読んでいただければ幸いです。AEDの補助金制度には様々な要件があります。なぜ、その要件が求められているのか時代背景を考察しながら、実際の市区町村の例を用いてご説明いたします。

1. AEDとは?どんなときにAEDが必要になるの?

AEDは日本語で「自動体外式除細動器」と呼ばれ、心肺停止になった際に自動で除細動(電気ショック)の必要性を判断し除細動を実施するための医療機器のことです。AEDがすべてを自動でやってくれるわけではないのですが、救助者が正しく使用すれば、誰でも傷病者の命を救うことができます。さて、AEDが必要になる場面はどんなときでしょうか。
答えは「心肺停止を疑ったとき」です。すぐに胸骨圧迫(心臓マッサージ)を始めるとともに、AEDを使用しましょう。

 

2. そもそも心肺停止って何?

心肺停止を少し掘り下げて解説していきます。心肺停止とは、意識・呼吸・循環の全てが無しとなっている状態です。
心肺停止を“心臓が止まった”状態と捉えている方は少なくありません。しかし、それでは少々誤解が生じてしまいます。たとえ心臓が止まっていなくとも、“心臓から血液が出ていかない”状態になることはあります。
図1をご覧ください。心肺停止の波形は4種類あります。いずれも不整脈として見たり聞いたりしたことがある方もいらっしゃるかと思います。この4種類は2つのグループに分けることができます。

心肺停止 4つの波形
【図1】心肺停止 4つの波形

除細動の適応ありとなっている①VF(心室細動)と②pulseless VT(無脈性心室頻拍)は、“心臓が細かく震えている状態”です。痙攣のようにピクピク震えているだけなので、正常な心収縮は見込めず、心臓から血液が出ていきません。なお、除細動の適応なしとなっている③PEA(無脈性電気活動)と④Asystole(心静止)は、心臓が止まっている状態です。まとめると、心臓が細かく震えていることや心臓が止まっていることが原因で、心臓から血液が出ていない状態が心肺停止なのです。
ただし、心臓の動きを直接観察することはできませんので、傷病者の意識・呼吸・循環の有無を確認し、3つとも“なし”であれば心肺停止と判断してください。

⇒心肺停止に対するAEDを含めた対応法についてはこちらをご覧ください

3. AEDのメカニズム

AEDはどのようにして心肺停止の患者を救うことができるのでしょうか。ここからはAEDの役割を説明します。

AEDの役割は心電図解析と充電・放電の2つに分かれます。
心電図解析:AEDの電源を入れ、音声ガイダンスに従い、傷病者にAEDパッドを貼ります。パッドにつながっているコネクタをAEDに接続することで、心電図解析が始まります。前述した通り、心肺停止の4つの波形は2つのグループに分けられます。震えている状態、もしくは止まっている状態でしたね。図2のように、心電図解析では波形がどちらに該当するのかを判断しています。除細動適応である場合のみ充電に進みます(適応でなければ、「ショックは不要です」とアナウンスされ、胸骨圧迫を継続します)。
充電・放電:除細動の適応があるVFかpulseless VTであった場合、自動で充電を始めます。充電が終われば、ショックボタンが光るので、救助者がそのボタンを押すことで除細動が実施されます。もし、除細動によって正常な心リズムに戻れば、傷病者の救命につながります。
院内ならば、医師が心電図モニターを見ながら心電図を解析し、手動式除細動器を充電し、除細動を実施します。ただし、院外で誰かが心肺停止になったときに、そこに医師が居合わせて、なおかつ手動式除細動器もあるということは考えられませんよね。AEDは心電図解析・充電を自動で行い、救助者にショックボタンを押すよう促すことで、院内で医師が担っている役割を代行しています。したがって、医療資格の有無を問わず、一般の方でも、誰でも使用することができるのです。

【参考】【医師監修】AEDの使い方について基礎から解説

AED装着後の流れ 除細動適応の解析
【図2】AED装着後の流れ 除細動適応の解析

4. どんなところにAEDを設置したらいいの?

街を歩くといろいろなところにAEDが設置されており、最も身近な医療機器のひとつだといえます。誰からもわかるように“AEDを設置しています”という看板やステッカーを掲示している施設もあり、安心して施設を利用できるというアピールにもなります。
住民の皆さんのAEDへの関心も高まっており、なかには「近所の高齢者が集まる公民館にAEDがない」「毎週のように少年野球の試合が開催されるグラウンドにAEDがない」と心配になってしまう方もいらっしゃるかもしれません。果たして、AED設置が望ましい場所とはどんなところでしょうか。
2018年に日本救急医療財団からAED の適正配置に関するガイドライン1)が発表されていますので、そちらをご紹介します。

効果的・効率的なAEDの設置にあたって考慮すべきこと
【表1】効果的・効率的なAEDの設置にあたって考慮すべきこと

表1は、AEDの効果を最大限に発揮するために、どのような場所に設置するのが望ましいのかヒントが挙げられています。
例えば、前述した「近所の高齢者が集まる公民館」をあてはめてみましょう。高齢者には心疾患の既往のある方が少なくありません。そのような方々が集まる場所であり、倒れたときに救命処置を実施できる人員も確保できるでしょう。地域によっては、救急車の到着まで時間を要するところもあります。3つも条件が揃っているのですから、AEDの設置によって救われる命があると考えられます。
次に挙げた「毎週のように少年野球の試合が開催されるグラウンド」はいかがでしょうか。子どもたちはみんな元気で、不整脈のリスクがないように思えます。しかし、子どもの数だけ引率者(指導者、保護者)は増え、近隣の方々も立ち寄られるかもしれません。加えて、硬いボールがダイレクトに心臓を直撃すれば、心臓震盪になる可能性もあります。救助者もいますし、救急隊の到着まで時間を要するならば、条件4つをすべて満たすことになります。

この他にも、ガイドラインには、以下のような具体例が挙げられています。

AEDの設置が推奨される施設の具体例
【表2】AEDの設置が推奨される施設の具体例

様々な具体例が挙げられていますが、住民が気軽に集まる場所である公民館と子どもがたくさんいる幼稚園・保育園に関して、考えていきたいと思います。
公民館(公会堂)は公共施設でありながら、住民が主体的に運営している施設でもあります。地域の特徴は住民の方々が一番よく知っていらっしゃるかと思います。公民館にAEDがあった方が良いのか、表1のような条件を満たすような場所なのか、この記事をもとに住民皆さんでAED設置を検討するきっかけになればと思います。
幼稚園・保育園に通う子どもは心肺停止になるイメージが浮かびにくいですよね。ただし、万が一に備えてAEDを導入する施設が増えているのが現状です。すでに設置されている方も、設置を検討されている方も、子どもに一般的な(成人用の)AEDを使っても問題ないのか、別の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひ参考になさってください。

⇒未就学児のAEDに関して詳細にまとめています。こちらへ(小児用AED)

5. 近所にAEDがあるから自施設にはなくてもいい?近所のAEDはいつでも使える?

皆さんが住んでいる地域の学校、公共施設、会社にあるAEDはいつでも使えるでしょうか。いわゆる時間外(土日・夜間)には建物自体が開いていないので、室内にあるAEDは使用することができませんよね。とある大手コンビニチェーンは、全国で1,500台ものAEDを設置していると公表しています。多大なる社会貢献をされていますよね。しかし、全国すべてのコンビニを合計すると5万店舗以上あるといわれています。24時間営業で安心できますが、最寄りのコンビニに必ず設置されているとは限りません。
他にも、AEDを設置している会社等が「あくまでも自施設内で起こった心肺停止を想定して設置している」という考えであれば、敷地外へのAED持ち出しが許可されるかどうかは未知数です。
また、同じ敷地内にAEDが設置されている場合でも、AEDがすぐに使えないリスクは存在します。救急隊到着までに時間を要するという理由で広大な敷地の郊外グラウンドにAEDを1つ設置していたとしましょう。事務所に設置していて、たまたま最も遠い位置で心肺停止が起こったとします。取りに行くのに片道6分かかるならば、社会復帰率は半分の50%まで下がります(効果的なCPRを実施していても3~4%/分の低下)。
このように、設置施設の営業時間や、設置場所の位置関係の問題で、AEDは確かに設置されているものの、迅速に使用できない事例が起こりうるのです。

6. やっぱり費用が心配!補助金は使えるの?

AEDを設置したいと考えても、医療機器の価格はなかなか見当がつかないという声も多いです。購入する場合は、メーカーにもよりますが、22~30万ほどです。なお、この価格が総額ではなく、消耗品も考慮する必要があります。バッテリーは数年ごとに交換する必要があり、約3~4万円ほどです。AEDパッドは1万円が相場です。長期保証や期間内の消耗品交換が含まれるパック料金を設けているメーカーもあります。
命を救うための医療機器とはわかっていても、決して安い価格ではありませんので、即決というわけにはいかないと思います。市区町村によっては補助金制度を設けているところもありますので、具体的な例をご紹介します。(リースという考え方もありますが、補助金の対象外になることが多いので今回は購入する場合を想定してご説明します)
東京都大田区の24時間AED設置補助事業では、地域の安全と安心のため、AEDを購入し、区内の自らの施設に24時間誰でも使える状態で設置する際の費用を補助しています2)。町会や自治体でAEDを導入する場合に補助される金額を図3に示します。

AED購入補助の対象と補助金額(文献2一部改変)
【図3】AED購入補助の対象と補助金額(文献2一部改変)

ただし、“24時間AED設置”補助事業という名称の通り、AED購入補助の適用となるためには様々な条件を満たす必要があります(図4)。

AED購入補助の要件(文献2一部改変)
【図4】AED購入補助の要件(文献2一部改変)

1)~5)は非常に具体的に要件が定められているので、導入をお考えの方は実現可能か団体でご検討いただければと思います。「AEDを使用できる技術」と「継続した主体的なメンテナンスの必要性」を強調している点が印象的です。設置してあるだけで、技術的に使えなかったり、スタッフがいないから取り出せなかったりすると、救命のチャンスを失ってしまいますからね。設置する団体の救命への意識が向上すれば、地域の救命率が上がる可能性もあります。どこに行ってもAEDが入手できなかった地域において、新たに設置したAEDによる救命が実現できれば、あなたの地域に住む“誰かの大切な人”の命が助かることになります。これは、非常に意義のあることだと感じます。
今回は大田区の例をご紹介しましたが、市区町村によってAED補助事業は異なりますので、お住まいの市区町村の情報を収集していただければ幸いです。

7. 救命講習ってどんなもの?

AED購入の補助要件になることもある救命講習に関しては、別の記事にまとめています。詳細についてはこちらをご覧ください。

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まとめ

今回は、AEDの基礎から導入に関わる補助金制度までトータルで解説いたしました。命を救うことのできる医療機器だからこそ、“設置して終わり”にならないよう、救命講習やメンテナンスの要件が設けられているのだと考えられます。救命関連の記事を初めて読まれる方は、「なにやら難しそうだな…」とハードルが高いように思えるかもしれませんが、一度身につけてしまえば生涯役に立つ知識や技術だと思います。この記事をきっかけにAEDに関心を持っていただける方が増えてくだされば嬉しいです。

【参考文献】

1) 一般財団法人日本救急医療財団,AED の適正配置に関するガイドライン,2018,1-14
2)東京都大田区ホームページ,24時間AED設置補助事業,(2023年4月27日参照)

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