成人と小児の急変対応の違いと小児に対するAEDの使用について

この記事は下記のような方におススメです。

  • 小児用AEDについて知りたい。
  • 成人と小児の急変対応の違いを学びたい。
  • 急変対応の指導や勉強会を企画する機会がある。

心肺停止に至る経緯

“急変”とは、文字通り、急に患者状態が変化することです。その中で最も重篤度が高いのは心肺停止です。「意識なし・呼吸なし・循環なし」の状態であること迅速に見極め、直ちに救命処置を始めなければなりません。

さて、なぜ心肺停止が起こってしまうのか、皆さんはその原因を考えたことがありますか。心肺停止に至る経緯は、成人と小児・乳児で異なります(表1)。

年齢別 心肺停止に至る経緯
年齢別 心肺停止に至る経緯

【表1】年齢別 心肺停止に至る経緯

成人の心肺停止は、先に心臓が止まる心停止先行型で、原因のほとんどは心筋梗塞です。心筋梗塞は、心室細動(VF)などの致死性不整脈を合併しやすく、心肺停止に至ります。一方、小児が心筋梗塞になったケースはほとんど聞いたことがありませんよね。先天性心疾患を罹患しているような特殊な場合を除いて、小児の心肺停止は先に呼吸が止まる呼吸停止先行型であることがほとんどで、窒息や溺水によって起こります。酸素を取り込めなくなり、低酸素血症、徐脈となり、心肺停止に至るのです。

除細動の適応を思い出してみましょう。VFなどの致死性不整脈に対しては除細動が必要でした。つまり、成人が心肺停止に陥った場合、迅速な除細動が救命のカギであるといえます。しかし、小児はそうとは限りません。懸命にAEDを準備しても、解析結果は「ショックの適応なし」かもしれません。その場合、院外ならば、救急隊が到着するまで質の高いCPRを継続して救命率の低下を防ぐこと、院内ならば、一刻も早く原因検索を行うことが重要となります。果たして、「小児の心肺停止=AEDが不要」ということでしょうか。

小児に致死性不整脈は起こらない?

以前に比べれば、AEDを設置する保育所や幼稚園、公園などが増えています。主に子どもを対象とした施設であるのに、何のためにAEDが設置してあるのでしょうか。

前述の通り、小児は呼吸が原因で心肺停止に至るケースがほとんどで、心筋梗塞による致死性不整脈は考えにくいです。しかし、致死的不整脈が出現するきっかけは身近に潜んでいるのです。

例えば、“心臓震盪(しんとう)”が挙げられます。難しい漢字が並んでいますが、簡単に説明すると、外部から心臓へ強い衝撃を受けた時に、致死性不整脈が出現することを指します。そうなれば、AEDによる除細動は必須です。心臓震盪の代表的な原因は、球技でボールが胸部を直撃することです。野球では、キャッチャーがプロテクターで胸部を守っていることがよく知られていますが、打球を最も近くで受ける可能性があるピッチャーはプロテクターを装着していません。たとえスポーツをするような年齢でなくとも、幼い子どもほど予想外の行動をとる可能性は高いですよね。子どもが、いつ、どのようなきっかけで胸部に強い衝撃を受けるのか、誰にも予想ができません。また、元気な子どもほど、行動範囲が広く、倒れた瞬間の目撃者がいない場合もあります。倒れた原因が心臓なのか呼吸なのか、とっさに判断することは、たとえ医療従事者であっても簡単なことではありません。

むしろ「小児=呼吸停止先行型だから致死性不整脈は起こりにくい」という先入観が、AEDの迅速な使用を妨げてしまうという見方もできるのではないでしょうか。

小児の心肺停止に対して、成人と全く同じAEDを使用してもよい?

二次救命処置ACLS、PALSの範囲になりますが、具体的な数値を出した方が理解しやすいので、手動式除細動器の設定をもとに除細動に必要なエネルギー量を説明します。

二相性の除細動器の場合、成人に推奨されるエネルギー量は150Jです。ガイドラインによりますが、小児は体重1kgあたり*2J(または4J)なので、例えば20kgであれば40J(または80J)となります。成人と小児では体格が異なるように、除細動に必要なエネルギー量も異なります。AEDによっては、スイッチで成人用と小児用のエネルギーを切り替えられる機器や、小児用パッドとコネクタの間にエネルギー減衰システムが搭載されている機器があります。つまり、小児には小児用のAEDを使用することが望ましいのです。

*1回目の除細動について、AHA PALSプロバイダーマニュアルでは2J/kg1)、JRC蘇生ガイドラインでは4J/kg2)と規定している。

何歳まで小児用AEDを使ったらいいの?

AHA(アメリカ心臓協会)は、8歳未満の子どもには小児用AEDの使用を推奨しています。ただ、8歳=小学2~3年生であり、少々わかりにくい指標となってしまうので、日本では未就学児(小学生になっていない子ども)かどうかが、小児用AEDを使用する基準となっています。

なお、AHAの年齢分類では「小児:1歳~思春期まで」と定義されており、小児用AEDの使用基準とは一致せず、皆さんの中には混乱した経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。そして、誰でも学習してから時間が経つと記憶が曖昧になってしまうので、救命の緊迫感の中でどのAEDを使用するのが正しいのか判断できるとは限りませんよね。

その対策として、JRC蘇生ガイドライン2020では、小児用AEDの表記が“未就学児用”に、成人用AEDは“小学生から大人用”に変更されました2)。2021年に発表されたばかりなので、まだ小児用と未就学児用の表記が混在していますが、AEDの正しい年齢分類が浸透するきっかけになればと思うところです。

小児用AEDがない!成人用AEDを使ってもいいの?

医療資格がなくともAEDが使用できるようになって約20年が経過しました。設置されているAEDは、古いものから新しいものまで機能は様々です。あなたが手にしたAEDが、必ずしも小児に対応しているとは限りません。もし、成人用AEDしかない場合、あなたならどうしますか。

結論から言いますと、小児に成人AEDを使用しても良いです。エネルギー量は基準より大きくなりますが、それで致死性不整脈が止まれば、救命につながります。「大は小を兼ねる」と覚えてください。

“小学生~大人”に小児用AEDを使ってもいいの?

小児病棟に、成人用AEDを使わないといけない患者はいるでしょうか。誤りを防ぐために、成人用は“小学生~大人用”に表記が変更になったというお話をしてきましたね。小児病棟といっても、小学生以上の患者が急変することは十分にありうることです。そこで、手元には小児用AEDしかない場面をイメージしてみましょう。

結論から言いますと、成人に小児用AEDを使用してはいけません。ここで、「小児用AEDでも、もしかしたら除細動が成功するかもしれない。一度試してみたらいいのではないか」という意見もあると思います。迅速な除細動は救命率を上げる要因のひとつなので、その気づきは検討の余地がありそうですね。

では、AEDの仕組みをもう一度振り返ってみましょう。患者にAEDパッドを貼ることで、自動で心電図を解析し、自動で充電を終わらせることで、誰でも除細動を実施できる長所を持っています。しかし、長所と短所は表裏一体です。解析と充電を行っている間は患者に触れることすらできません。洞調律に戻る見込みが薄いエネルギー量で除細動をするために、胸骨圧迫の中断時間が大幅に延長してしまうのです。これでは救命率の低下につながってしまいます。必要なエネルギー量を用いることができる成人用AEDが到着するまでは、質の高いCPRを継続することが適切だといえます。

まとめ

AEDを中心に、成人と小児の急変対応の違いを説明してきました。皆さんの中には、小児救急でどんなときも確実にAEDを操作しなければいけない環境や、集中治療室等で手動式除細動器を操作しなければならない環境に身を置いている方もいらっしゃると思います。除細動は、重篤な患者の生命を救うことができる非常に重要な治療です。しかし、知識だけ身についていても「頭ではわかっていたけど動けなかった」となってしまえば、患者の生命にも影響を及ぼすかもしれません。

実技に不安がある方は、ぜひPEARSやPALSコースの受講を推奨します。福岡博多トレーニングセンターでは、感染対策を十分に行った上で、演習時間をしっかりと確保し、臨床現場ですぐに役立つ知識と技術を身につけることができます。

【参考文献】
1)アメリカ心臓協会,PALS小児の二次救命処置プロバイダーマニュアル,2021,p.89
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2)一般社団法人日本蘇生協議会,JRC蘇生ガイドライン2020,医学書院,2021,p.161
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