ICLSって何?
ICLSとは日本救急医学会が主催している「突然の心停止に対して最初の10分間の適切なチーム蘇生を習得する」ためのコースです。ICLSはImmediate Cardiac Life Supportの略であり、ただちに(Immediate)心停止に対応するために、学習目標が立てられています。例えば、「心停止時の4つの心電図波形を診断できる」などです。
心肺停止とは、意識なし、呼吸なし、循環なしの状態です。最も重篤な状態ですので、あれこれ考える時間的猶予はなく、“ただちに”動けるようになるには、頭でも身体でも心肺停止時の対応方法を記憶しておく必要があります。この考え方はICLSでもACLSでも共通しています。
ACLSって何?
ではACLSとは何なのでしょうか。ACLSはAHA(アメリカ心臓協会)が主催しているコースで、Advanced Cardiovascular Life Supportの略です。「心肺停止・呼吸停止に対する二次救命処置」のみならず、「重症不整脈(徐脈・頻拍)」「急性冠症候群」「虚血性脳卒中」の初期対応も学ぶことが可能です。心臓だけでなく脳血管に関する内容を含んでいることは、ご存じでなかった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
AHAは救急心血管系疾患の教育において世界で最も権威のある団体です。ACLSコースは30年以上にわたる研究と経験に基づいており、世界標準かつ最先端の知識と技術を習得できます。AHA は5年ごとにガイドラインをアップデートしており、昨年、最新版のG-2020(ガイドライン2020)へアップデートされたばかりです。
現在ACLSは、日本循環器学会、日本麻酔科学会の専門医試験等の受験資格に必須の条件となっており、アメリカだけでなく日本でも幅広く認められている資格です。
ICLSとACLSの違いとは?
前述の通り、ICLSが意識なし、呼吸なし、循環なしの「心肺停止患者」への初期対応を習得するコースであるのに対して、ACLSは「心肺停止・呼吸停止に対する二次救命処置」のみならず、「重症不整脈」「急性冠症候群」「虚血性脳卒中」の初期対応も範囲に含まれており、講義にも試験にも含まれます。このようにACLSは、カバーする範囲が広いのが特長で、ICLSで学ぶ内容はACLSに含まれます。これらの違いは下記の画像を見るとイメージしやすいかと思います。
ICLSにもACLSにも共通する心肺停止に対する対応については、下記のページで詳しく解説していますので、ご確認ください。
【関連記事】ACLSとは|ACLSの要点整理|Ⅳ、心肺停止
【図】ACLSとICLSの違い
具体例として、重症不整脈では、ICLSでも扱っている「心停止時の4つの心電図波形(VF、pulselessVT、PEA、Asystole)」に加えて、ACLSでは「徐脈」、「頻拍」まで範囲が広がります。モニターで波形が診断できるようになるだけでなく、重篤度のアセスメントや薬物治療まで範囲に含まれます。
ICLSは意識なしの患者に対して、一次アセスメント(BLSアセスメント)を行うのに対して、徐脈・頻拍は、意識ありのケースがほとんどですので、ACLSではICLSの範囲にはない二次アセスメント(ACLSアセスメント)のトレーニングも兼ねます。
BLSアセスメントでは、意識確認→応援要請→呼吸・循環確認とシンプルな流れであるのに対して、ACLSアセスメントは意識のある患者に、酸素投与を考慮し、モニター装着、I.V.ルートを確保した上で、バイタルサインを評価したり、必要な検査をオーダーしたりと、少々難しく感じるかもしれません。しかし、臨床で出会うほとんどの患者が意識のある状態ですので、より実践的なアセスメントのトレーニングができます。
除細動器による電気治療に関しても、ICLS、ACLS共通の範囲である循環なしのVFやpulselessVTに対する「除細動」はもちろん実践しますが、循環ありの不安定な頻拍に対する「カルディオバージョン(同期電気ショック)」や、症候性徐脈に対する「経皮的ペーシング」も実践します。特にICUや循環器内科のスタッフの方々は、心肺停止時の除細動よりも、不整脈治療であるカルディオバージョンに馴染みがある方もいらっしゃるかもしれませんね。ACLSコース以外ではなかなかカルディオバージョンの手技を学ぶ機会はありませんし、除細動器を使用する手技ですので、除細動とカルディオバージョンが混同してしまう方が多いです。きちんと整理して、翌日からすぐに役立つ知識と技術を定着させることができます。
【関連記事】ACLSの要点整理 | カルディオバージョンと除細動の違い | 同期の有無やエネルギーの違いについても解説
福岡博多トレーニングセンターのACLSコースの特長とは?
ACLSコースを開催しているトレーニングセンターは全国各地にありますが、福岡博多トレーニングセンターではACLS1日コースを開催しています。他のトレーニングセンターの多くはACLSを2日間かけて開催していますが、『2日連続で休みを取るのが難しい(特に土日)』『受講料を安くしてほしい』との声が多くの受講者より聞かれましたので、2015年6月より1日コースへと変更しています。
また、当トレーニングセンターでは、臨床現場で遭遇する「心肺停止・呼吸停止」「重症不整脈」のほとんどのパターンを8~10個の実技シナリオに凝集し、ACLS1日コースで理解できるまで丁寧に指導いたします。せっかくのコース受講を単なる認定証発行のために終わらせるのではなく、翌日からすぐに臨床現場に活かせる知識と技術を習得し、実際に自身で動けるようになることを目標にしています。
ACLSを1日に凝縮して学ぶことに不安のある方のために
ACLSコースは幅広い内容を取り扱っているため、『本当に1日だけで習得できるのか心配』と受講前の方から不安の声が聞かれるのも事実です。そのため、当トレーニングセンターではACLSプレコースを開催しております。1日コースを受講するための予備または補助を目的としたコースです。ACLS1日コースと同じマネキン、同じ除細動器を使用して、実技シナリオを実践します。ACLSのイメージが沸くだけでなく、最後のプログラムにはACLSのための心電図講義がありますので、特に心電図が苦手な方にとっては大きな自信につながるはずです。
もし、従来のようにACLSコースに2日間を費やすのならば、プレコース+ACLS1日コースに参加した方が、ACLS2日コース以上の質が確保できるので、オススメです。