ポケットマスクとは
心肺停止の方を救命する際、AEDによる除細動と、質の高い心肺蘇生法を行うことが最も重要です。心肺蘇生法を行う際は、胸骨圧迫に加えて、ポケットマスクなど用いた人工呼吸を行う必要があります。心肺蘇生法の全体的な流れにかんしては、下記のページをご確認ください。
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この記事では、ポケットマスクとは何か、ポケットマスクの正しい使い方について説明していきます。
胸骨圧迫の方法は以下の記事で解説していますので参考にしてください。
胸骨圧迫の方法もし、あなたの目の前で突然バタンと人が倒れたらどうしますか。普段からしっかりとそういう状況をシミュレーションをしている方であれば、「心臓が止まっているのか確認して、止まっていたら心肺蘇生法を行わないと!!胸骨圧迫と[…]
ポケットマスクとは、人工呼吸を行う際に使用する人工呼吸用マスクのことで、傷病者に直接触れずに人工呼吸を行うことができる携帯用マスクのことです。人工呼吸を行う際に、何も使用せず人工呼吸を行うのは、ためらいがあるでしょうし、何も使用せずに人工呼吸を行うと感染症のリスクもあります。
そのため、一般的にはポケットマスクには逆流防止弁がついており、これにより感染防御が行われています。
COVID19感染症を踏まえたポケットマスクの扱い
ポケットマスクには逆流防止弁がついておりこれが感染防御としての働きをしている、と説明しました。これはあくまでも傷病者からの血液や体液の接触による感染症の予防に有効である意味合いしかありません。近年、その流行が問題となっているCOVID19の感染症のような、飛沫感染、空気感染を主体とする病原菌の感染症には有効性は示されていません。現状、COVID19が流行しているので、ガイドライン上からはポケットマスクの使用ではなく、バッグマスクの使用が推奨されています。もしかすると、今後ガイドライン上からポケットマスクの使用は永遠に消えてしまうかもしれませんが、ポケットマスクの使用方法を知っておくことは大切です。
ポケットマスクの使い方
では、ここかからポケットマスクの使い方について説明していきます。使い方を理解するうえで、空気が漏れやすい位置というのを理解しておくと、正しい押さえ方のイメージが持ちやすいので、空気が漏れやすい位置からしっかりと確認していきましょう。
ポケットマスクで、吹込み(換気)をした際、空気が漏れやすい位置というのはある程度決まっています。それは鼻筋と両口角です。下記画像の赤丸部分が漏れやすい部位です。そのため、この漏れやすい部位をしっかりと押さえることがポケットマスクを持つ際のコツとなります。
ポケットマスクの置く位置と持ち方
では、ポケットマスクの置く位置と持ち方について説明していきます。ポケットマスクを置く際は、先ほど説明した漏れ出やすい位置から空気の漏れないように置きましょう。
もう少し具体的に説明していきますね。まずは、ポケットマスクのとがった方を鼻側にして、マスクの内側が口と鼻を覆うように密着させましょう。傷病者の頭側から、人差し指と親指をマスクの縁に沿わせ、マスクを押し付けます。もう片方の手の親指をマスクの下端に沿うように置きます。残りの4本の指は、顎先の骨部分におきます。この時、マスクの下端を親指と残りの指で摘むイメージです。画像でマスクの当て方を見てみましょう。
頭部後屈顎先挙上法で気道確保
ポケットマスクで換気する際は、必ず気道確保を行ってから吹込みを行いましましょう。きちんと、気道を通って肺に空気が入れるためです。気道確保を行う際は、頭部後屈顎先挙上法という方法で気道確保を行います。
頭部後屈顎先挙上法とは、顎先を持ち上げながら頭部を後ろにそらすことで気道を確保する方法です。上の図を見るとイメージしやすいと思います。
では、なぜ気道確保を行うのでしょうか。
意識がなくなると、筋肉が緩み舌で気道を塞がってしまうことがあり、これを「舌根沈下」といいます。気道確保を行うことで、舌が喉の方から離れて、気道閉塞が解除されます。気道確保はとても重要なので、必ず気道確保を行って吹き込みをしましょう。
吹き込む速さと量
では、マスクで喚起する際の吹き込む速さと量について説明します。
吹き込む速さは、1回に1秒かけて、2回吹き込みましょう。そして、吹き込む際量の目安は、換気により胸が少しあがるのを目で確認できる程度の量が目安となります。
頻回に換気を試みたり、一回の換気で空気を入れすぎてしまうことは、過換気の原因となるためやめましょう。
過換気とは、簡単にいうと空気の入れすぎです。頻回に吹き込んだり、量を多く吹き込みすぎると過換気になります。過換気をしてはいけない理由は、胃膨満と、胸腔内圧の上昇を起こすためです。胃膨満とは、胃に空気が溜まることを言います。胃膨満を起こすと、嘔吐の原因になり、肺に吐物が流れこんで誤嚥のリスクが高まります。また、胸腔内圧が上昇すると、心臓に十分な血液が戻ってこないことが原因で、心臓から送り出される血液量(心拍出量)が低下してしまいます。
まとめ
ここまで、ポケットマスクによる人工呼吸の方法を説明してきました。COVID19感染症の流行により、使用する機会がほとんどなくなっているポケットマスクですが、何事も正しい方法を知っておくことは大切です。基本をしっかり押さえて、緊急時に対応ができるようにしておきましょう。