Hands only CPR(ハンズオンリーCPR)とは|考え方を詳しく解説

Hands Only CPR(ハンズオンリーCPR)とは

皆さんはHands Only CPRという言葉を聞いたことがあるでしょうか。通常、医療従事者が心肺蘇生法を行う際、胸骨圧迫30回と人工呼吸2回の心肺蘇生法を行う事が推奨されています。Hands Only CPRとは、その名の通り、胸骨圧迫だけの心肺蘇生法,つまり人工呼吸を行わない心肺蘇生法のことを意味しています。当然、すべての過程を完璧に行うことができるのであれば、人工呼吸も併用した方が質の高い心肺蘇生法になるわけですが、なぜこのような考え方が生まれたのでしょうか。

ここでは、AHAガイドラインに基づきながら解説します。

【関連記事①】BLS(一次救命処置)とは | BLSの手順とAHA(アメリカ心臓協会)公認のBLSコースについて解説

【関連記事②】胸骨圧迫の方法 | 胸骨圧迫の際の手の位置・深さ・速さ(リズム)などポイントを解説

 

Hands only CPRは誰でも実施してよい?

Hands Only CPRはあくまでも胸骨圧迫のみ、つまり人工呼吸を行わない心肺蘇生法ですので、医療従事者や心肺蘇生法の訓練を受けた一般の方にはこの方法で行う心肺蘇生法はお勧めできません。つまり、先ほども言った通り、できるものなら本当は胸骨圧迫だけでなく人口呼吸も組み合わせた心肺蘇生を行ったほうが良いのです。
AHAガイドライン上、「Hands Only CPRを行ってもいいですよ」、とされているのは、「心肺蘇生法の訓練を受けていない一般の方」とされています。
大事なことは、あくまでもHands only CPRというのは、行ってもよいですよ、といった意味合いだということです。

これは、実際に一般の方が心肺蘇生法を行う場面を想像してみたらわかりやすいのですが。おそらく心肺蘇生法の訓練を受けたことのない一般の方で、人工呼吸を含めた心肺蘇生法を完璧に行うことのできる方は、ほとんどいないと思われます。
もっと言えば、人工呼吸はおろか、胸骨圧迫すらおぼつかない方もまだまだ多いのではないでしょうか。

実際に、AHAガイドライン2020に掲載されている情報によると、2015年の米国のデータでは、病院外で発生した心停止で、救急隊が到着する前に市民救助者による心肺蘇生法を受けた方は40%未満だったそうです。

そういった背景がある中で、一般の人でも、心肺停止の方に遭遇した場合は、難しいことはいいから、せめて胸骨圧迫だけは行ってくださいね、といった考え方からきたものが、Hands only CPRとなるのです。

ですので、医療従事者や心肺蘇生法の訓練の受けたことのある一般の方で、バッグマスクなどの人工呼吸用デバイスが近くにある際は、是非人工呼吸を組み合わせた心肺蘇生法を行うようにしてきましょう。とはいえ、近年はCOVID-19感染症の影響もあり、医療従事者であっても、街中で倒れた方に対して人工呼吸まで行うことはなかなか現実的ではないかもしれません。適切な感染防御具がない場合もHands only CPRだけでも行うようにしましょう。

なお、ポケットマスクを使用した人工呼吸の方法については以下の関連記事で解説しておりますので、気になる方はそちらも一緒にチェックしてみてください。

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Hands Only CPRと通常のCPRの比較
Hands only CPRを扱う際に、皆さんの疑問となるのが、人工呼吸はしなくても大丈夫なのか、ということです。
もちろん、人工呼吸を行っていないということは、その間まったく呼吸をしていないということですので、心肺蘇生法において人工呼吸というのは非常に大切です。
ですが、実際のところ、Hands only CPRと通常のCPRで比較した場合に、結果は変わらなかったとする報告もいくつか存在しています。その理由としては、心肺蘇生法で人工呼吸を取り入れた場合、人工呼吸を行う時間がかかりすぎていることが示唆されています。人工呼吸に時間がかかるあまり、胸骨圧迫の中断時間が長くなるようであれば、心肺蘇生法の効果は著しく下がってしまうのです。
その意味でも、正しい心肺蘇生法を普段からトレーニングしておくことは非常に大切です。



Hands only CPRは誰にでも行ってい良い?

前述したとおり、訓練を受けていない一般の方は、心肺蘇生法に自信がないのであればHands Only CPRを行ってもよいですよ、と説明してきましたが、倒れた人すべてにこれを適用してよいわけではありません。

AHAガイドラインでは、医療従事者の方や心肺蘇生法の訓練を受けている一般の方は、人工呼吸を組み合わせた心肺蘇生法を推奨しており、訓練を受けていない非医療従事者の方やポケットマスクなどの感染防御器具がない場合はHands Only CPRを行うことを推奨しています。
しかし、これはあくまでも倒れた方が成人(大人)の場合に限った話です。

倒れた人が、小児・乳児(子どもや赤ちゃん)の場合は、また話が変わってくるのです。
通常、子供や赤ちゃんが心肺停止になる場合、その原因は心臓ではなく呼吸が原因になることのほうが圧倒的に多くなります。例えば、窒息してしまい呼吸ができなくなったことが原因で心肺停止してしまうといったことなどです。
普通に考えれば、元気だった子どもが、心臓が原因で突然バタンと倒れることはあまり考えにくいことはわかると思います。

もし、心肺停止の原因が呼吸によるものである場合、人工呼吸をしなければ救命できる可能性は著しく低くなってしまいます。

そういった背景から、AHAガイドラインでは、心肺停止の方が子供や赤ちゃんの場合、Hands only CPRを行って良いのは、目の前で突然倒れた場合(心停止先行型心肺停止)のみとされています。

ちなみに、心停止先行型心肺停止とは心臓が原因の心肺停止のことで、呼吸が原因の心肺停止のことは呼吸先行型心肺停止といいます。

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まとめ

ここまでHands only CPRについて解説してきました。

Hands only CPRは人工呼吸を行わない特殊な心肺蘇生法で、心肺蘇生法の訓練を受けたことのない一般の方が心肺停止の方に遭遇した場合に「許容」されている心肺蘇生法のことです。

しかし、人工呼吸を含めた心肺蘇生法を行うことができるのであれば、それに越したことはありません。
AHA(アメリカ心臓協会)公認のBLSコースでは、理論のみだけでなく実技も含めた心肺蘇生法を学習してくことが可能です。実技に不安がある方や、心肺蘇生法をしっかりと学びたい方は是非受講を検討してみてください。

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