ハートコードBLSコースとは
AHA(アメリカ心臓協会)のBLS(一次救命処置)コースは世界的にもよく知られている救命講習の1つですが、皆さんは、2020年に日本でも導入された「ハートコードBLSコース」をご存じでしょうか。どちらも同じAHAの認定証が得られます。
ハートコードBLSコース(以下、ハートコード)の最大の特徴は、コースがオンラインパート(筆記試験を含む)と実技パート(実技試験を含む)に分かれていることです。知識習得に該当する部分は自己学習のオンラインパートで完結し、会場では実技パートのみに集中して取り組みます。
今回は ハートコードBLSについて理解していただくため、従来のBLSコースとの比較しながら説明していきたいと思います。
従来のBLSコースとハートコードBLS コースの違い
従来のBLSコースとハートコードBLSコースの違いについて、以下の3つの観点から解説していきます。
BLS資格取得のためにかかる時間
会場で過ごす時間は、BLSコースは5時間、ハートコードは2時間となります。ハートコードの方が短いため、スケジュール調整は断然しやすくなります。職場で勤務希望が出しにくかったり、子どもの世話などで長時間の外出が難しかったりと、時間的制約がある中でBLS資格の取得を目指されている方には、大変ありがたい特長と言えるでしょう。専門医等の要件でBLSとACLSの両方の資格を早急に取得しなければならない場合にも、夜にハートコードBLSを、翌日ACLS1日コースを受講すれば、一気に取得することが可能です。
しかし、トータルでBLSの資格取得にかかる時間が短くなるわけではありません。オンラインパートには筆記試験が含まれていますので、教材をもとに自身で筆記試験にクリアする知識を習得する必要があります。スムーズに習得できれば短時間で済みますし、習得に難渋すればなかなか進まないかもしれません。もちろん、BLSコースでも事前学習が必要であることは同じです。
単純に会場で過ごす5時間と2時間の比較だけでなく、BLS資格取得のためにかかる時間は個人差があると捉えていただければと思います。
知識確認(筆記試験)のタイミング
どちらのコースも会場の実技パートを通して知識を深めることができます。実技が習熟すれば知識も深まり、知識が深まれば実技がさらに習熟します。知識と実技の習得には相乗効果があるのです。
BLSコースは、コース終盤の最も知識が深まった時点で筆記試験の評価を受けることができます。あなたの実力を最大に発揮できるタイミングといえるかもしれません。
ハートコードでは、会場での実技パートに臨む前に、あらかじめオンラインパート内で知識の確認を行います。すでに臨床経験が十分であり、知識と実技をつなげて理解できる方は、オンラインパートでスムーズに知識の確認を終えることもできます。
受講者に合った知識習得のサポート
オンライン学習というと、一方的に学習内容が提示されたり、全員が同じ問題を解いたりと、“画一的”なイメージが先行する方もいらっしゃるかもしれません。しかし、ハートコードのオンラインパートでは全員が同じ設問に取り組むのではなく、AIが設問を通して受講者の理解度を判定し、受講者に合った学習内容を提供してくれます。スキマ時間に学習できるので、臨床経験によってある程度BLSの内容のイメージがつく方は速いペースで学習を完結させることもできます。
一方、BLSコースの特長としては、知識の習得に関しても、受講者の背景によって噛み砕いた説明を心がけたり、臨床での活用方法を一緒に検討したりと、インストラクターならではの工夫ができます。
また、BLSの受講動機が個人のスキルアップだけでなく、「指導役になったので教え方を参考にしたい」という組織的な役割を踏まえた方は意外と多いです。BLSコースは知識と手技の両方を会場で教授するので、インストラクターの“教え方”も参考にしようと取り組む受講者もいらっしゃいます。受講生のニーズに合ったスキルアップをより支援しやすいともいえます。
どちらのコースを受講されても、会場でインストラクターに質問したり、繰り返し実技の練習をしたりと、個々の学習ニーズを満たしてコースを修了することができる点は同じです。
受講に関する費用
AHAの救命講習は、同じ資格でも受講料の設定は開催する団体が独自に決めるため、若干受講料が異なります。詳しくは各トレーニングセンターの情報をご参照ください。団体ごとに見ると、BLSコースとハートコードの受講料はおおよそ同じくらいの金額に設定していることが多く、大体15,000円〜20,000円程度であることが多いです。
ただし、通常のBLSコースとハートコードBLSコースではテキストに関する扱いが変わってきます。通常のBLSコースでは受講のためには、各自でBLSテキスト(BLSコースヘルスケアプロバイダー受講マニュアルガイドライン2020)を用意する必要があり、コース受講料と別にテキスト代が必要となります。一方で、ハートコードBLSコースではBLSテキストの電子書籍版が受講料に含まれているため、新たにテキストを購入する必要はありません。その点で、通常のBLSコースと比較するとハートコードBLSコースの方がトータルでの受講料は若干抑えられる傾向にあります。
ただし、ハートコードを受講する場合でも、製本版のテキストの方が使い慣れている方や、電子機器等が使えない環境(臨床現場等)でも使いたい方に関しては、製本版のBLSテキストも併用することも可能です。
【表】従来のBLSコースとハートコードBLSコースの違い
従来のBLSコース | ハートコードBLSコース | |
資格取得に要する時間 | 事前学習+コース当日会場(約5時間) | オンラインパート+会場(約2時間) |
筆記試験 | コース当日 | オンラインパートで事前に実施 |
知識習得サポート | インストラクターが受講者の背景や理解度を踏まえて工夫する | AIが設問を通して受講者の理解度を判定する |
受講に関する費用 | コース受講料に加えてテキスト代も必要 | コース受講料のみ テキスト代は不要 |
ハートコードBLSコースの受講までの流れ
図をもとにハートコードBLSコースの申し込みの流れを説明します。
申し込む手段はBLSコースと同様です。ハートコードは①オンラインパートと②実技パートの2段階に分かれていますので、申し込みも2段階で行うことがほとんどです。ここで、オンラインパートに加えて、実技パート(会場受講)の申し込みも同時に行い、会場に行く日を決定できる団体もあります。ただし、実技パートの受講日までにオンラインパートを終了しておく必要がありますので、言い換えれば、実技パートの受講日=オンラインパートの〆切となります。
まずは①オンラインパート申し込みの流れです。申し込みが終われば、オンラインパート登録用のURLが送られてきます。このURLから学習を開始することができます。パソコン、タブレット、スマートフォン等、身近な電子機器を使って学習を始めましょう。有効期限内であれば何度でも学習できますので、不安なところは繰り返し学習することをオススメします(所要時間は最短2~3時間といわれていますが、個人差があります)。最後に、オンラインパートの修了証が発行されます。
次は②実技パートに進みますので、実技パート受講日の指定がお済みでない方は、ここで実技パートの申し込みをすることになります。各トレーニングセンターの会場へ行き、実技講習を受けます。受講が終わりましたら、AHA公認の認定証が発行されます。BLSコースと同じ資格が得られます。
参考にハートコードのオンラインパートの流れについての動画を掲載しますので、参考にしてみてください。
まとめ
今回はハートコードBLSコースについて、従来のBLSコースとの比較しながら紹介しました。二つのコースにはそれぞれ特徴があり、メリットがあります。BLS資格を取得される際には、二つのコースの違いを十分理解された上で、ご自身に合ったコースを選択していただければと思います。
福岡博多トレーニングセンターで開催しているハートコードBLSコースへのお申し込みは、オンラインパート・実技パート共に下記よりお申込みいただけます。現時点では、公募での開催は福岡県(博多駅より徒歩4分)に限定されていますが、出張依頼などあれば可能な限りご協力いたしますので、お問い合わせよりご連絡ください。
福岡博多トレーニングセンターで開催している従来のBLSコースへのお申し込みは、下記よりお申込みいただけます。
福岡県福岡市を中心に、福岡県北九州市、久留米市、熊本県、長崎県で定期的に開催しています。