1、窒息(呼吸停止)と気道異物
急変による呼吸停止は、ほとんどの原因が窒息であり、その原因のほとんどが気道異物による気道閉塞である。
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気道閉塞は重篤度により軽度と重度に分類される。軽度は不完全閉塞、重度は完全閉塞を意味する。それぞれの場合の徴候と対応法は表18のとおりである。
【表18】気道閉塞の分類
なお、BLS全体の流れとしては、下記のページを参考にしていただきたい。
【関連記事】BLS(一次救命処置)とは | BLSの手順とAHA(アメリカ心臓協会)公認のBLSコースについて解説
2、気道異物による窒息への対応
気道異物による窒息への対応法(窒息解除)は手技の違いにより、成人・小児に対する対応と乳児に対する対応に分けられる。窒息解除は手技の違いのため成人と小児は基本的には同じであり、乳児は異なる。このことは「Ⅰ-14、成人、小児、乳児の異なる指標による分類」図6を再度参照してもらいたい。
また、窒息後の意識状態により、意識(反応)がある場合と意識(反応)がない場合でその方法が異なる。意識(反応)がある場合の対応は成人・小児に対する方法と乳児に対する方法では大きく異なるがが、意識(反応)ない場合は全ての年齢で同じ対応となる。窒息解除への対応を表19にまとめる。
意識(反応)がある場合の対応法は、前述したとおり成人・小児への対応と乳児に対する対応は異なる。まず成人・小児への窒息解除から述べる。窒息患者はUniversal Choking Sign(ユニバーサル・チョーキング・サイン:万国共通窒息サイン)(図24)を呈する。このサインをみつけると完全気道閉塞を起こした窒息と判断しなければならない。そして、ハイムリッヒ法(腹部突き上げ法)(図25)を行い、意識(反応)がなくなるか異物が出るまで行う。ただし、妊婦及び太った人では胸部突き上げ法を行い(図26)、小さい小児に対しては救助者がひざまずいて小児の体格に合わせて行う(図27)。
ハイムリッヒ法についての詳しい解説は下記のページにまとめているので参考にしてほしい。
【関連記事】ハイムリッヒ法とは|窒息の対応法を詳しく解説
次に、乳児の窒息解除の方法について述べる。乳児に対しては、毎秒1回の速さで、5回の背部叩打、その後5回の胸部突き上げ法を行い(図28)、このサイクルを繰り返す。意識がなくなるか、異物が出るまで行なう。
意識(反応)がない場合は年齢に関係なく、循環確認なしに胸骨圧迫からCPR(胸骨圧迫→人工呼吸)を行う。そして、毎回の人工呼吸のときに口の中の異物を確認し、異物が見えれば指で取り除き、見えなければCPRを続ける。
【表19】気道異物による窒息への対応法
【図24】Universal Choking Sign 【図25】ハイムリッヒ法
(ユニバーサル・チョーキング・サイン) (腹部突き上げ法)
【図26】胸部突き上げ法 【図27】小児へのハイムリッヒ法
(妊婦や太った人への対処法)
【図28】背部叩打・胸部突き上げ法
3、人工呼吸の方法(まとめ)
人工呼吸の方法は成人に対する場合と小児・乳児に対する場合で異なる。また、呼吸停止と心肺停止で、バッグマスク法(頭部後屈あご先挙上)と高度な気道確保(気管挿管など)で異なるため、それぞれの場合に分けて考えなければならない。これらをまとめたものが表20である。
呼吸停止の場合は、バッグマスク法(頭部後屈あご先挙上)による気道確保でも高度な気道確保でも、成人に対しては6秒に1回の換気、小児・乳児に対しては2~3秒に1回の換気となる。
心肺停止の場合の人工呼吸とはCPR中に行う人工呼吸のことで、バッグマスク法(頭部後屈あご先挙上)では、成人1人法・2人法及び小児・乳児の1人法では30:2同期CPRで人工呼吸を行い、小児・乳児の2人法では15:2同期CPRでの人工呼吸を行う。高度な気道確保がなされているときは非同期CPRとなり、成人に対しては6秒に1回、小児・乳児に対しては、2~3秒に1回の人工呼吸となる。
【表20】人工呼吸のまとめ