皆さんは、窒息した方に出会ったことがあるでしょうか。持病がなく、普段元気に過ごしている方でも、いつ窒息を起こしてしまうかわかりません。しかし、窒息に対しておこなう正しい対処法を知っている人はそれほど多くはないと思います。
ここでは、AHA蘇生ガイドライン2020に基づいて、「ハイムリッヒ法」と呼ばれる窒息への専門的な対処法についてわかりやすく解説していきます。
窒息についての総合的な考え方については以下の記事で解説しておりますので、以下の記事をご覧ください。
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ハイムリッヒ法とは
ハイムリッヒ法とは、上でも説明した通り、窒息した人に対して行う対処法の1つです。このハイムリッヒ法ですが、行って良いのは窒息した人が大人か小児の場合に限定されます。乳児の窒息はまた方法が変わりますので、別記事でまとめていますので、そちらを参考にしてください。
また、ハイムリッヒ法は、窒息した人が意識がある間しか行うことが出来ません。
つまり、ハイムリッヒ法を行うのは、「窒息した人で、まだ意識がある成人か小児」となります。
ハイムリッヒ法の行い方
ここまで、窒息した成人や小児でまだ意識のある人にはハイムリッヒ法を行う、ということを説明してきました。ここからは、どのようにハイムリッヒ法を行えばよいのかを簡単に解説します。窒息した人を見つけたら以下の手順でハイムリッヒ法を行いましょう。
1,傷病者に近づき、窒息したかどうか確認する。
窒息した人に近づき、「物が詰まりましたか?窒息ですか?」など声をかけましょう。
窒息していれば、声は出せず、うなづきます。その際は、窒息した人の背後に周りハイムリッヒ法で助けましょう。
2,窒息した人の背後にまわる
窒息した人に、助けるために背後にまわることを伝え、背後にまわります。
3、窒息した人の足を肩幅程度に広げてもらう
窒息した人に、肩幅程度に足を広げてもらい、救助者の片方の足を傷病者の足の間に入れます。そうすることで窒息した人により密着でき、力強くハイムリッヒ法が行えます。また、傷病者が意識を失って倒れそうになった時にも支えることができます。
4、窒息した人のへその真上に片方の拳を置く
傷病者のへその真上に片方の拳を置きます。この時、拳のどの面を傷病者に当てるかがポイントです。下記の画像のように、親指と人差し指の側面側が傷病者のへその真上に来るように当てて下さい。
5,斜め上に突き上げる
力強く、斜め上にお腹を突き上げましょう。
ハイムリッヒ法について詳しく解説してきましたが、窒息した人を見つけることが出来るようになることも大切です。まずは人が窒息した状況をイメージしてみましょう。突然、物がのどに詰まると、誰かに助けを求めようと思っても声すら出すことが出来ません。やがて、苦しくなり、両手が首元にするような仕草をするようになります。(上の図参照)
この仕草のことをユニバーサル・チョーキング・サインといい、この仕草を見た場合は、「あ!窒息している!」と判断できるようになりましょう。
妊娠している人や太っている方への対応
妊娠している人や、太っている傷病者に対しては、お腹に手を回すことが出来ませんので、そのような場合は胸部突き上げ法を行います。
ハイムリッヒ法は腹部を強く突き上げるため、妊婦へのハイムリッヒ法は胎児に影響がでることが考えられます。若い女性への窒息解除の際は、必ず妊娠の有無を確認する方がよいでしょう。太っている方の定義は難しいですが、救助者が腕を回したときに手が届かないなど、ハイムリッヒ法を行うのが困難な場合は胸部突き上げ法を行いましょう。
胸部突き上げ法を行う場合は、ハイムリッヒ法の場合とほとんど変わりません。まずは片方の手を窒息した人の胸の中央に置き、もう片方の手で拳を覆い、斜め上に突き上げて下さい。女性が男性を救助する際は、斜め上に突き上げることが難しくなるかもしれません。そのような場合は、行いやすくするために、可能であれば窒息した人に膝をついてもらうことで、胸部突き上げ法が行いやすくなります。
ハイムリッヒ法をいつまで続けるべきか
ハイムリッヒ法をいつまで継続するかは非常に重要です。ハイムリッヒ法は、窒息した人の異物がとれるか、意識がなくなるまで続けて下さい。意識がなくなった場合、方法が異なります。
では、窒息した人の意識がなくなった場合はどうしたら良いのでしょうか。
窒息した人の意識がなくなったら、窒息した人を床に寝せて、胸骨圧迫と人工呼吸による心肺蘇生法を行います。その際の通常の心肺蘇生法と異なる点は、毎回の人工呼吸の度に、口腔内を確認して、異物があれば除去してください。ただし、口腔内をよく確認しないまま手で異物を探すことはやめましょう。これは、盲目的指掻き出し法と言い、異物を気道に押しこむ原因となることがあります。
心肺蘇生法については以下の記事で詳しく解説していますので、そちらを参考にしてください。
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ハイムリッヒ法で異物が取れてもメディカルチェックが必要
ハイムリッヒ法は、強く腹部を突き上げます。異物が出て、窒息が解除されたとしても、重要臓器の損傷などを起こしている可能性がゼロではありません。そのため、異物が取れたとしても必ず病院に行ってもらいましょう。
当センターのBLSコース、ハートコードBLSコースでは、専用の人形を用いてインストラクター指導のもと、ハイムリッヒ法を体験することができます。皆様の受講をお待ちしております。