ACLSとは|ACLSの要点整理|Ⅱ、呼吸管理と人工呼吸

Ⅱ、呼吸管理と人工呼吸

呼吸停止・心肺停止に対する人工呼吸

呼吸停止・心肺停止の状態では、人工呼吸は、1)バッグマスク(BM)を用いて行うか、2)気管挿管(高度な気道確保)で行うかにより人工呼吸の方法が違います。その違いを【図表2-1】にまとめました。ちなみに、呼吸停止・心肺停止に対して行う人工呼吸の場合、酸素濃度100%の酸素(リザーバーマスク15L/分)投与が必要です。

呼吸停止に対して行う人工呼吸は、BM換気であろうが気管挿管であろうが同じで、6秒に1回の人工呼吸です。そして、呼吸停止の場合は未だ循環が保たれていますが非常に不安定な状況なので必ず2分毎に循環確認が必要となります。

ところで、呼吸停止に対して行う人工呼吸を補助呼吸ともいいます。補助呼吸とは、呼吸がない(呼吸停止)、または不安定な呼吸状態(重篤な呼吸不全)のように、傷病者の自発呼吸だけでは必要な酸素の取り込みができない場合に行う人工呼吸のことです。

それに対して、心肺停止に対して行う人工呼吸は、BMで行う場合は胸骨圧迫と人工呼吸比が30:2の同期CPR10秒以内に2回の人工呼吸、気管挿管を行うと非同期CPRで6秒に1回の人工呼吸となります。

ちなみに、ここでいう同期とは、胸骨圧迫しているときは人工呼吸を行わない、人口呼吸をしているときは胸骨圧迫を行わない、ということです。同期を行うことにより、胃への空気の流入を防ぐことができます。

【図表2-1】心肺停止・呼吸停止のときの人工呼吸方法

呼吸停止心肺停止
対応方法補助呼吸心肺蘇生(CPR)

バッグマスク換気

(頭部後屈あご先挙上)

6秒に1回30:2、同期CPR

人工呼吸は10秒以内に2回

高度な気道確保

(気管挿管)

6秒に1回

非同期CPR

人工呼吸は6秒に1回

※呼吸停止の場合は2分毎に循環確認が必要

自発呼吸がある場合の酸素濃度(FiO2:%)と酸素投与流量(L/分)

自発呼吸がある場合の酸素濃度(FiO2:%)と酸素投与流量(L/分)との関係は【図表2-2】のとおりです。自発呼吸がある場合の酸素投与方法は、一般的に3つのデバイス(器具)があり、「経鼻カニューラ」、「マスク(シンプルマスク)」、「リザーバーマスク」です。

経鼻カニューラ・シンプルマスク・リザーバーマスク

まず、室内気(RA:room air)の酸素濃度は21%です。ですから室内気の場合(人工的な酸素投与がされていない場合)は21%の酸素投与ということになります。しかし、室内気の酸素では不十分な場合、前述した3つのデバイスのどれかを使用して酸素投与を行わなければなりません。

経鼻カニューラは21~40%の酸素投与が必要と思われる場合に、マスク(シンプルマスク)は40~60%の酸素投与が必要と思われる場合に、リザーバーマスクは60%以上(60~100%)の酸素投与が必要と思われる場合に使用します。しかし予想どおりにSpO2やPaO2が上がらない、または予想以上に上がりすぎる場合は酸素流量を上げるまたは下げるか、投与デバイスを変更しなければなりません。

経鼻カニューラでの酸素濃度Yは、酸素投与流量Xに対して、Y=4X+20(X=1~4)で近似できます。この式により経鼻カニューラの場合の酸素濃度は酸素投与流量から概算できます。経鼻カニューラの場合、酸素流量は4L/分までが望ましく、5L/分以上にすると鼻に多量の酸素が入り、患者の負担が大きすぎて良くありません。

マスク(シンプルマスク)での酸素濃度は酸素投与流量に対する近似式がありません。そこでだいたいの近似として、5L/分投与では40%、6L/分では48%、7L/分では56%、8L/分では58%、9L/分では59%、10L/分では60%と当てはめると近似できます。

リザーバーマスクでの酸素濃度Yは、酸素投与流量Xに対して、Y=10X(X=6~10)で概ね近似できます。ただし、酸素投与流量が10L/分では酸素濃度は99%、酸素濃度を100%にするためには酸素投与流量が15L/分必要です。

【図表2-2】酸素流量と酸素濃度の関係

酸素流量と酸素濃度の関係

呼気終末二酸化炭素分圧(ETCO2、またはPETCO2)測定の意義

酸素化の状態を正確に把握するには血液ガスを取り酸素分圧(PaO2)をみればわかります。しかし、継続的に血液ガスを取ることはできないため、現実的には酸素化の状態を簡単かつ継続的にみていく方法として酸素飽和度(SpO2)にて経時的にフォローを行っています。同様に、二酸化炭素分圧(PaCO2)を近似的に簡単に継続的にみていく方法として呼気終末二酸化炭素分圧(ETCO2、またはPETCO2)があります。

呼気終末二酸化炭素分圧(ETCO2、またはPETCO2)は、気管挿管した状態で挿管チューブの先端にカプノメーターを付けると測定することができ、カプノグラフィーとして確認することができます。PaCO2≒ETCO2+3mmHgで、標準値は、PaCO2とほぼ同じ40±5(35~45)mmHgです。

心肺蘇生時の呼気終末二酸化炭素分圧測定の意義は【図表2-3】のとおりです。要点は3つあり、正確に気管挿管されているかの判定として最も優れた方法であること、CPRの質のモニタリングができること、心拍再開(ROSC)を検出できることです。

気管挿管後の確認は一般的には5点聴診を行います(胃・左右上肺・左右下肺の聴取)。この聴診でほぼ確認できますが100%正確とはいえません。そのためETCO2の測定が行われ、ETCO2の値が測定できれば(ETCO2の値が0でなければ)気管挿管されていると判断でき、この測定法が最も正確な測定法です。

CPRの質の確認では、ETCO2が10mmHgを超えていれば質の高いCPRが行われていると判定できます。ETCO2が10mmHg以下であれば、質の高いCPRができていないことになり、胸骨圧迫の速さが不適切、または深さが足りないことになります。

心拍再開の検出は、CPRを行っている最中にETCO2が急に上昇することで検出できます。ETCO2が40mmHg以上になれば心拍再開と考えられます。尚、ETCO2が10mmHg以下であれば質の高いCPRがなされていないため心拍再開はないと考えられます。

【図表2-3】カプノグラフィーの使用

Ⅰ、カプノグラフィーの使用法

気管挿管後にカプノメーターを装着して

呼気終末二酸化炭素分圧(ETCO2)を測定する

Ⅱ、カプノグラフィー推奨の意義

1、気管挿管チューブの位置の確認

気管挿管されているかどうかの確認が5点聴診よりも確実である

気管挿管されていなければ(食道挿管の場合は)、ETCO2=0mmHgである

2、CPRの質のモニタリング

ETCO2が10mmHg以下では質の高いCPRはなされていない

3、心拍再開(ROSC)の検出

1)ETCO2が10mmHg以下ではROSCはない

2)ETCO2が40mmHgを超えるとROSCと考えられる

カプノグラフィ波形

さて、ここでは「呼吸管理と人工呼吸」について学んできましたが、その他セクションのACLSの要点整理は、以下のリンクよりご確認ください。

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